毎年とは言いませんが、必ず訪れる職員の退職の申し出。こんなときどうすればよいのか非常に悩みます。

辞めてほしくないけど、辞めないことはその人にとって幸せか?

昨年度は退職を申し出る職員がいませんでした。そのことで、自分の経営者としての役割は全うされているのではないか?と勘違いしていたのかもしれません。

今回、退職を希望する職員が出てきましたので、もう一度「職員にとって働きやすい職場を作る」という、経営者の大切な仕事の一つについて考えてみたいと思います。

もちろん退職したいという職員の気持ちを思いとどまらせることも一つの方法だと思いますが、基本的に、経営者は「その人の人生が幸せになるための選択肢」を選ばなければならないと思います。その人の話を聞いて、退職することのほうがその人にとって幸せだと思えるのであれば、優しくその人の背中を押してあげるのが、経営者の大切な仕事だと思っています。

 

本当は辞めてほしくない

経営者にとって、職員の退職はとてもストレスの掛かることです。これまで一生懸命に育ててきた職員と働きやすくなるように一生懸命取り組んできたことが台無しになったように感じる出来事だからです。

ですので、経営者の立場からすると、どんな理由であれ職員から「辞めたいです」と言われることは楽しいこと・嬉しいことではありません。

中には「業務が回らなくなってしまうから、辞めてほしくない」や、「これまでこんなに一生懸命育ててきてやったのに、恩を仇で返すのか!」と憤る経営者もいると思います。私自身もそういう気持ちがないといえば嘘になります。ですが、それ以上に、これまで一生懸命働いてきてくれた職員が「辞めたい」と思うまでなってしまったことが悲しいと感じています。

 

何が原因なのだろう?

仕事は生活の中で多くの時間を費やすものです。自分自身の時間と労力を対価にして、収入を得る手段でもあります。そして、仕事を通して様々な経験を積み、自分自身の幸せのために一歩ずつ近づいていくための手段でもあると考えています。

その仕事を「辞めたい」と思うに至るのには、それなりの理由・原因があると思っています。

経営者として何が原因で辞めたいと思ったのかは、必ず把握しておかなければならないことだと思っています。もちろん、本当のことを話してくれない職員がいることも理解しています。職員の言葉の端々や態度、経営者からの質問に対する反応などから、「真の原因」を掴まなければならないこともあると思います。

 

今回退職に至った職員に関しては、「職場の人間関係」特に、先輩かつ上司に当たる職員の態度・人間性が受け入れられないところまできたというのが原因でした。

 

自分ができなかったことはなんだろう?

以前からその話を聞いたことがありましたが、その先輩・上司に当たる職員からヒアリングしてみても、そのことを自覚していないどころか、上司側もまた、今回辞めたいと言い出した職員に対して不平不満を持っていることがわかりました。

この時点で何かしら手を打っておけばよかったのかもしれませんが、それぞれの話、また、同じ業務に当たっている職員からもヒアリングをした結果、双方の「気持ちの問題」のような気がしていたため、忙しい状況が緩和されれば心にゆとりが出来、お互いのことを理解し合えるのではないか?と楽観視していました。

今から考えると、もっと積極的に現場に行き、状況を改善するための手立てを打っておけばよかったのかもしれません。

 

改善すべきところは改善し、より働きやすい職場に

原因は複雑に絡み合っていて、一つの真因を見つけ出すことはとても難しいかもしれません。それでも、経営者として今後も事業を永続させるためには、改善すべきところは改善し、より働きやすい職場にしていかなければなりません。

 

辞めたいと思うに至った原因は、改善のためのヒント

退職の意向を申出た職員の言葉には、職場を改善するヒントにあふれています。辞めたいという直接的な原因が人間関係にあるのであれば、人間関係を悪化させている人を明確にして、現状→周囲の人の感情→退職という事象の順に一つ一つ腹落ちするように説明する必要があります。そのうえで、どうやって改善するかを一緒になって考えていかなければなりません。

給与・待遇面が理由なのであれば、現在の給与・待遇を決めるに至った理由の説明をしなければならないかもしれません。その点で、財務諸表を適切に読み解ける力と、わかりやすく説明できる力が経営者には求められると思います。

家庭の事情など園がどうしようもない事情で辞める場合は、正直、園として何も出来ないかもしれません。

どのような原因であれ、退職の意向を伝えることは、職員にとっても非常にストレスの強いことです。その言葉、その態度には貴重な情報が沢山含まれていることを認識したほうが良いと思います。

 

経営者だけが改善できるポイントはなにか?

退職の原因が人間関係や職場環境、業務内容にある場合は、経営者も現場の職員も改善できるところがあります。逆に園の風土や経営者自身の問題、給与・待遇の問題の場合は、経営者だけが改善できることになります。

給与・待遇に不満を持って退職する人については、経営者がもっと収入を増やして、業務改善をすることで改善できる余地があります。もっとも認可保育所等の場合は、収入が法令等で固定されているので、給与・待遇を上げることは難しいかもしれません。ただ、「納得感」を高めることは出来ると思います。

園の風土は経営者の人格人となりが非常に大きな影響を与えます。「園の風土が合わない」と言われたときには、同じように感じている職員がいないかよく注意してみたほうが良いです。一人が辞めてしまうと次々と辞めてしまう人が出てくるかもしれないためです。そして、園の風土を変えなければならないと感じたときには、経営者自身が自分の行動・態度・言葉遣いなどを改めて、「経営者が変わったよ」というメッセージを送る必要があります。

経営者自身の問題で辞めるという人がいた場合は、より一層注意が必要です。ほとんどの職員にとって、経営者自信に問題があることを直接言葉で経営者に伝えることは難しいことだと思います。「あなたのことが嫌いです」と面と向かって言うわけですし、そこまで言われる状況になっているということは、その園の経営は危機的状況にあると言っても過言ではないと思います。

 

誰もが働きやすい職場は無いかも?

一人が辞めたことで改善をすると、今度は別の人にとって働きにくい環境になってしまうかもしれません。これは人がそれぞれ趣味嗜好が異なり、大切にしていることが異なっているからです。当たり前のことですが、退職というストレスの強い出来事が起きるとこのことを忘れがちになってしまいます。

ある程度は誰かにとって働きにくい環境であることは「仕方がないこと」と割り切ることも大切です。

もっとも、「ある程度は気に入らないこともあるが、この職場は他と比べて働きやすいと思う」と感じている職員が大半を占める職場を作ることは可能だと考えます。誰にとっても100点満点の状況は不可能でも、誰にとっても60点以上の環境は、比較的容易に作り出すことが出来ます。

 

職場は経営者のためだけのものではない

経営者は園の経営の全責任を負うとともに、園の風土やそこで働く人の価値観を作り出すことが出来ます。それは経営者が醸し出す雰囲気や大切にしていることを職員が感じ取って出来上がるものだからです。ですが、経営者のカラーで職員を染めようとしてしまうと、そのカラーに合わなくなって辞めたいという人が出てきてしまうかもしれません。

 

そこで働く職員が職場の主人公

保育園や認定こども園は子どもが中心の場所です。子どもたちの最善の利益のために日々職員が努力をしています。「生活の場所」として保育園や認定こども園を捉えると、その主人公は子どもたちになりますが、「仕事の場所」としての保育園や認定こども園を捉えると、その主人公は職員です。職員がとても楽しそうにしていないと、その保育園や認定こども園は子どもたちが主役になれない生活の場所になってしまいます。

 

主人公が輝く職場に

主人公が輝ける場所になるためには、経営者はプロデューサーやディレクターや裏方として、主人公が輝くための台本づくりや環境整備をしたりして、場を作ります。そして、主人公が輝くために必要なサポートをしていく裏方にならなければなりません。

主人公は様々な悩みを抱えながら、自分の役割を全うしようと必死になっています。主人公がどんなことで悩んでいるのか、どこで躓いているのかを経営者の側から聞き取りに行き、同じ目線に立って、主人公自身が解決策を見つけて、自分の糧として成長できるようにサポートしなければならないのだと考えます。

 

今回の私の反省点

私自身は自分の仕事が忙しかったことと、人間関係の修復が得意ではないことを理由に、主人公が輝けるためのサポートをサボっていたと反省しています

私のサボりによって一人の職員が自分の職場を離れなければならないところまで追い詰められてしまったことは、非常に申し訳ないと思っています。ですが、起きてしまったことは変えられないですし、もしかしたらその人にとって新しい職場で働くことや全く別の人生を歩むことがとても幸せなことになるかもしれません。

今自分に出来ることを真正面から見つめて一つ一つ取り組んでいくしか無いのではないかと思っています。


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