園内研修を「受けただけ」にしないように

園内研修はどこの保育園・認定こども園でも実施していると思いますが、園長先生方はどうやって企画しているでしょうか?

園内研修をうまく使うことは、保育園全体の保育の質を高めるために非常に重要です。一方で、園内研修を「受けただけ」で終わらせてしまうと、せっかく貴重な時間を使ってやったことが無駄になってしまいます。

園内研修を「受けただけ」から「受けたい」と思うようにする仕組み、「学んだ内容」を日々の保育に活かすための「仕組み」、学んだ内容を「忘れないようにする仕組み」について考えてみたことはあるでしょうか。そんな悩みを持つ園長先生と一緒に勉強ができればと思っています。

以下のような内容について考えてみたいと思っています。

 

園内研修を「受けただけにしないように」

園内研修は何のためにするのか?

園内研修は保育士や調理員など、保育園・認定こども園で勤務している職員が抱えている課題を解決するために行うものと考えています。園長先生が気持ちよくなるためでもなければ、職員の方々を叱咤激励するためのものでもないと思っています。

保育園・認定こども園で勤務している保育士その他の職種の方々は、毎日子どもたちの安全を確保しながら限られた時間の中でたくさんのやることを抱えています。そして、子どもとの関わり方や保護者との対応、書類仕事、計画や記録の作成、行事の準備、壁面装飾や飾り付けなどの制作に勤しんでいます。その中で抱えきれない課題に押しつぶされてしまう人も中にはいるかも知れませんが、ほとんどの方は、「子どもと一緒に生活することが楽しい」「子どもと遊ぶことが楽しい」と感じているのだと思います。

課題に押しつぶされてしまう前に、その課題を解決する手段を知り、実践することは、「子どもと一緒に生活することが楽しい」「子どもと遊ぶことが楽しい」という職員の幸せを高めることになります。そのために必要な「手段」を提供するのが園内研修だと思います。

誰を対象に研修をするのか?

職員はみんな課題を抱えています。人によってその量や内容は様々ですが、似たような課題を抱えている人が一緒に話し合うことも重要になります。

何のための研修なのかや、テーマによっても研修に出てほしい人は異なってきます。研修を企画する際にはどのような人にどのようなことを理解し実践してほしいかをよく考えて参加させるようにしなければなりません。実はこの前提には「誰が何を出来るのか」「誰がどのような資質を持っているのか」を把握しておかなければならないという問題があります

上記問題を解決するためには、各園でキャリアパスの設計と評価制度をしっかりと作っていかなければならないのですが、これがまた難しいので、実際問題としては研修制度を構築しながらキャリアパスを作っていくのが現実的です。

 

何のテーマについて研修をするのか?

それぞれの職員で興味関心や知りたいことが異なっているのが当然です。また、園長先生や主任保育士の先生が「分かっててほしい」とか「出来るようになってほしい」と思うことが様々になっていることは当たり前です。

どこから手を付ければよいのか、つまり何から優先していくのかを考えることが必要になります。

保育園や認定こども園で「園内研修」をするためには時間の確保が必要ですが、とにかく保育園・認定こども園で働く職員には時間がありません。また、開園時間終了後に行うとなれば、残業代を支払わなければなりません。そのための資金的な余裕もなければなりません。

テーマの選定はできるだけ間違わないようにして、できるだけ効率的に行う必要があると思っています。

 

日々の保育にどうやって活かすのか?

研修を受けているときに職員の方がどんな感覚を得ているでしょうか?

職員の方が「良い研修だった」と感じているときには、実は注意したほうが良い場合と、効果が出ている場合とがあると思っています。

「良い研修だった」と感じているときのうち、効果が出ている場合とは、「自分一人では解決策が見つからなかった」という状況に対して「解決策そのもの」または「解決策を見つけるためのヒント」が得られた場合だと思っています。

基本的に職員の課題に対して解決策を見つけるのは、その職員本人でしかありません。他人から「解決策」という魔法の杖のようなものが与えられることはほとんど無く、仮に与えられたとしても「自分の解決策」としなければその職員は同じような課題に再度ぶつかったときに自分で解決できなくなってしまいます。

課題を「自分の課題」として真剣に向き合い、それに対する解決策を探したいと強く思っていなければ、「解決策のヒント」を見つけることが出来ません。仮に目の前に「ヒント」を提示されても見逃してしまいます。

「良い研修だった」と感じるのは、「日々の保育で感じていた課題を、自分で見つけた解決策で解決したとき」なのです。

 

ちなみに注意したほうが良い場合とは、「自分の頑張りを認めてもらえた」とか「抱えていた悩みが研修の中で解消した」と感じているときだと思います。

研修は「知識・経験のある人」が「知識・経験のない人」に対して「教えてあげる」「示してあげる」場と捉えられがちですが、これを履き違えて研修に参加する職員が「教えてもらえるんだ」とか「答えを示してもらえるんだ」と捉えてしまうと、自分で解決することなく表面的な解決策を手に入れて満足してしまう事になりかねません。また、研修に参加して、自分の悩みを共感してもらうことはとても大切なことかもしれませんが、自分でその悩みを解決出来ないにもかかわらず「達成感」だけを感じてしまいかねません。

このとき感じている「達成感」は「自分の不快な感情を解消させてくれた満足感」と言い換えられます。誰しもが不快な感情を持ちたくありません。その感情を持たないようにするためには、本当は自分の力で状況を変えるしか無いのですが、一時的に解消するために研修などの場面を使うことは誰もがやることです。

例えば、「感動の涙が止まらなかった研修」というものがあったとすると、その研修を受けて感動した職員は「とてもいい研修だった」と感じるかもしれません。ですが、それはその人のストレス発散でしかなく、ストレスが溜まるまえに何をすればよいのかを身につけるものではありません。つまり、日々の仕事には還元されない研修となっているのです。

 

忘れないようにするために、何が必要か?

人が聞いたことを出来るようになるために、何回同じことを聞かないといけないのか?7回教科書を読むことで東大に合格した女性がいましたね。私個人としても似たような感覚を持っています。脳科学の裏付けがあると大変よいのですが、調べきれていません。

一度他人から言われただけで自分のものにする人は、「一を聞いて十を知る」タイプなのかもしれません。こういうタイプの人は人から聞いた内容を自分の中で何度も復習し、また、実践する前に頭の中でリハーサルをしているのだと思います。だから1回しか聞いていないのにあたかも何度も聞いたかのように上手にできてしまうのです。

一方で、何度も同じことを言われないと出来ない、何度も同じ失敗をして同じ注意を受けてしまう人は、別の日に聞いた同じ話を「同じ話」として理解できないのだと思います。だから何度も同じことを言わなければならないときには「これは〇〇のときに話したことと同じだけどね」と言ってあげないといけないのです。

大変手間がかかる作業なのですが、忘れないようにしてもらいたいのであれば、それぐらいしなければならないのです。

そんな事やっていられないと感じられる方は、「何度も同じことを注意される人」を「教える側」にしてみましょう。どれだけ大変なのか、よく分かってもらえると思います。

こうやって、「教えてもらう」側から「教える側」にすることが一番効果的な忘れないようにするための仕組みです。

 

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