ノンコンタクトタイム調査報告書(全私保連あおむし通信)

 

調査の依頼が来た時点でとても面白そうな研究だと思っていましたが、報告書を読んでみたら、思った以上に面白かったので紹介します。

ノンコンタクトタイム調査報告書(全私保連あおむし通信より)

 

特に中盤からの考察には深く考えさせられました。

保育士が勤務時間後に行っている業務(=残業)に必要な時間はどれくらいか?で1日に60分~80分程度が必要と感じているなど、保育者の肌感覚がとても良くわかる調査結果となっている。

ノンコンタクトタイムとは

「子どもに関わる以外の時間」を意味しています。報告書の冒頭でも記載がありますが、2017 年 11 月に同省で開催された「保育現場の ICT 化・自治体手続等標準化検討会」において、

保育士の 「ノーコンタクトタイムについて、日本でも整理していくべき。そのためには、保育の業務全体を整理する必要がある。

と記載されています。

経済産業省の会議なので業務の標準化や効率化を行うことは当たり前という考え方がベースにあることを忘れてはいけませんが、個人的にも同じような思いがあります。

 

保育の仕事は「標準化」出来ない?

以前当園の保育士に「なんで人によってやり方が違うの?」「クラスの担任が変わるとクラスの回し方が変わるの?」と聞いたことがあります。いくつか出た答えとしては、「それぞれがどうやって教えられたかが違うから」や「その人にとって一番やりやすい方法でやるから」というものがありました。

確かに自分のやり方でやるのが一番楽ですし、一番失敗も少ないのだと思いますが、それで良いのでしょうか?

一番の根っこの問題は仕事のやり方を決めるときに「保育士」が基準になっているようにも思えます。子どもに与える価値を基準に仕事のやり方を決めるとしたら、自分のやり方を変えないといけない、前任者や教えてくれた人のやり方を変えないといけない場面が多々出てくるのではないでしょうか。

もっと大切なのは、「子どもに与える価値」は何なのか?を全員が共通認識を持っておく必要があるのではないか?ということです。

 

子どもに与える価値とは何か?

保育士の仕事は子どもが健康で安全に生活できる環境を確保し、子どもの成長・発達を促す環境を整備し、自らもその環境の一部となって、子どもが現在をよりよく生き、また将来の幸せな生活を営むだけの基礎になる力を身につけることだと思います。実際には日々の生活を繰り返すことで「何かを教える」「何かを学ぶ」を意識しないままに身についていくものだと思います。

子どもに与える価値とは、その「日々の生活を繰り返す」というプロセスそのものだと思います。日々の生活をどうやって組み立てていくのか、予定と異なったときにどうするのか、何を目標にどこを目指して日々の生活を行うのかというような「意識していない行為」が子どもに与える価値になっています。

保育者はこの「意識していない行為」を意識して取り組むことで子どもが健康で安全に生活できる環境、現在をよりよく生き、将来の幸せな生活を営む力を育むことが出来るようにしているのだと思います。

 

ノンコンタクトタイムの意味

子どもと関わっている間にもこの「子どもに与える価値」を考えながら日々の保育をしている保育者の方たちがほとんどだと思いますが、ちゃんと子どもと離れて落ち着いた環境で「子どもに与える価値」を考えることは、保育の仕事の価値を圧倒的に与えることが出来るようになります。

報告書にもありましたが、「飲食店で仕込みの時間を取らないところはない。むしろ仕込みの時間こそが他との差別化を生む」というポイントは非常にわかりやすい例だと感じました。

保育の仕事を「子どものお守り」としか捉えていないのであれば、この考え方は理解できないかもしれませんが、これから先子どもの数が減ってく時代において、この考え方を理解しておかなければ、いつまで経っても保育者の処遇は改善していかないと思います。

 

一経営者として保育者の地位向上を真剣に考えたとき、この報告書が示している内容はしっかりと把握したほうがよいと感じました。

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