さて、来年度の人事で一番困ったのは、職員の中に「成長意欲がない人」が一定数見られたことです。今のままで、自分が出来ることをできる範囲でやれば良いと思っており、それ以上の成長や、自分以外の同僚の成長を促そうとしない人が一定数いました。

確かにその人たちはどのクラスを任せても期待以上の働きをしてくれますし、経験も長いため園の中核的存在となっていますが、自分のやり方に固執したり新しいことにチャレンジすることを極端に嫌う性格になっています。

経営者としてはそういった「スタープレーヤー」が育つことはとても喜ばしいことなのですが、一方で、周りの職員を成長させてくれないのであれば、長い目で見たときに園からそこまで必要とされない職員に見えてしまう部分もあるのです。

保育の世界は複数名、チームで仕事を行っています。一人のスタープレーヤーがいても、周りの同僚がそこまで出来る人でない場合は、スタープレーヤーに負荷が集中したり他の人がシラケてしまったりすることが起きかねません。

また、スタープレーヤーが苦労なく出来ることを周りに依頼したときに、周りは死ぬ思い出努力しなければ出来ない状況になってしまうことがあります。そんなときスタープレーヤーはうんざりしたり、自分がかわいがっている同僚・後輩だけを優遇することが起きやすくなります。

スタープレーヤーから嫌われてひどい目に遭わされたくない同僚たちは、段々とスタープレーヤーの指示を待ってからしか動けない「指示待ち人間」となる可能性が非常に高く、長期的に見て園として危機的な状況になってしまいます。一刻も早くこういった考えをもつ人には別の考え方を身に着けてもらって、周りも成長させるようなスタープレーヤーになってほしいと思っています。

当面、私がやることは、その人に対して「周囲の人を変化させることがあなたに期待する内容です」と正面から伝えることでした。その時は「えー、そんなこと私一番苦手なんです」「○○さんはこれまで何度も伝えてきたけど変わらなかったから、もう変わらないですよ」といった形で、スタープレーヤーからは「やりたくないです」という意見が出てきましたが、想定内です。

今後もこの人には今の自分に期待されていることを根気よく伝えて、自分の使命、そしてあなたがいなければこの園は危険な状況になるのだということを理解してもらおうと思います。

人事の難しさは数ヶ月から数年に渡って伝え続けてもなかなか変わってくれない「人」という存在に対して、諦めずに根気よく熱意を持ち続ける作業をしなければならないからだと思います。

成長のトランジションサイクルモデルという考え方があります。

真正面から伝えることは「準備」フェーズに過ぎません。この後「遭遇」「適応」「安定化」までのフェーズをいかにして経験させるかは、経営者の手腕によるのかもしれません。

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