3歳以上児の給食材料費の実費徴収について

先日、3歳以上児の給食材料費(副食費)の実費徴収が2019年10月から始まることになりましたね。

幼児教育の無償化に関する協議の場 幹事会 (第2回)

資料1 幼児教育の無償化について

これに関して、全国民間保育園経営研究懇話会から署名書類が当園にも届きました。諸般の事情で署名は出来ませんが、なかなか良い視点を提示してくれていると感じました。

個人的には給食材料費を保育料から除外することには反対です。一方で、保育指針の改定から何から、現在の保育に関する国の動きを取り仕切っている「主流」と呼ばれる汐見先生などの流れに逆らうことも難しいと思っています。大きな流れが変わってくれることを期待していますが、私個人としては、自分の目の前の人達を幸せにするしか出来ないとも思っていますし、それ以上のことは正直あまり興味がありません。

ですが、保育者の負担を増やすようなことは反対したいと思っていますので、私個人の見解を述べたいと思います。

保育所、特に認可保育所については児童福祉施設として保育を実施していますが、児童福祉法の保育実施義務は依然として市町村に残っています。そして、保育実施義務者である市町村は保育を提供する対価として公定価格の一部を保護者から受領しています。残りは施設が法定代理受領しています。

保育の中で食事というものがどれぐらいの割合を占めているのか?を考えるときに、当園がある地方自治体で社会福祉法人が運営している保育所の財務諸表をWAMNETの電子開示システムを使って確認してみました。すると、事業費収入の約55%が給食費となっていました。他の地方自治体ではどうなっているのか調べていませんが、他でも大きな違いはないのではないかと思っています。

もちろん金額だけで比較はできないのかもしれませんが、金額だけを見れば、事業費つまり子どもにかけるリソースの半分以上が食事・給食に充てられているというのが事実となります。

ちなみに財務省の人たちが言いそうなことを想定すると、「事業活動支出における給食費は相対的に小さく、実費徴収になったとしても施設の負担は少ないだろう」ということがあります。確かに事業活動支出全体と比較すると、7%を下回るので負担は少ないとも言えます。ですが、保育所において人件費の割合が圧倒的に大きいのは周知の事実ですし、処遇改善等加算Ⅱの制度を作る際に財務省が余計な横槍を入れてきたので、使いづらい制度になっていることを考えると、財務省の言い分を素直に聞く訳にはいかないと感じています。(怒りが先行してしまってうまく主張をまとめられていませんが。。。)

さて、内閣府の資料を見ると、「保護者から実費で徴収している費用(通園送迎費、食材料費、行事費など)は、無償化の対象外。食材料費については、保護者が負担する考え方を維持。」とされています。

通園送迎費とは、通園バスなどを利用する際に保護者が支払う費用、行事費は遠足などで必要となる観光バスや動物園などの入園料などにかかる費用を想定していると考えられます。これらと給食費を同じ扱いとしているようです。これは保育事業者としては到底理解できないものだと思います。通園バスを利用しない人は費用負担しなくて良いものであり、行事費は行事がなければ発生しない費用であり、いずれも保育園によってはそもそも発生しない場合がある費用です。

一方で8時間から11時間かそれ以上の保育を行うのが原則となっている保育所で、給食を提供しないことは有りえません。それらを同種の費用として並べているのは、給食が当たり前に発生しない幼稚園の考え方が頭の中にこびりついている人たちが考えたのだろうな、と邪推せざるを得ないのです。

国の「主流」と呼ばれる人たちがなんとしても「幼児教育の無償化」を実現したいが、財務省を説得しきれなかった結果、このようなアホみたいな結末を迎えているのが現実だと思いますので、せめて保育所・保育者の負担が最低限になる方法を認めさせたいと思っています。

個人的な考え方としては、保育所が実費徴収する事務を市町村に業務委託するという案があります。

そもそも0歳~2歳までは保育料に給食材料費が含まれており、また、住民税非課税世帯以外は保育料を市町村が保護者から徴収していたのですから、口座引落や督促などの業務を「保育の実施義務者」として実施していたのです。だったら、3歳以上児について事務を継続することにそれほどの事務負担は無いはずです。

また、保育料の滞納があった場合には、保育所の利用調整において減点要因としている市町村は多いと思います。0歳~2歳に関しては保育料に含まれる給食費分が滞納となった場合は、減点されるにもかかわらず、3歳以上児について給食費の滞納があったとしても利用調整に何ら影響が出ないとする合理的な理屈はどこにあるのでしょうか?

住民税非課税世帯であれば3歳以上児であっても給食費の負担は免除されるとのことですが、保育所がそれをどうやって把握するのでしょうか?各家庭の経済状況、住民税額を毎年確認するのでしょうか?特別徴収から普通徴収に変わった世帯の有無、その世帯について住民税額がいくらかをどうやって把握するのでしょうか?3歳以上児については毎月市町村に対して、管内の認可保育所全てから全保護者の分の住民税額を定期的に提出させるのでしょうか?そのほうが市町村の事務負担が大きくなるのではないでしょうか?

幼児教育の無償化という命題は悪いものではありませんが、手法がお粗末過ぎるように感じます。一経営者に過ぎない私ですらこの程度のことが想定できるのに、内閣府等の官僚は何をしているのでしょうか。

また、保育団体ももっと実質的な議論をするべきなのではないでしょうか。確かに児童福祉の観点や食育の観点から「理念的に批判」することも大切だと思いますが、官僚の立場からして「合理的に否定されない以上は取り合わないでもよい」と切り捨てられていることに気が付かないのでしょうか。

マネジメント
おすすめの記事