保育園の経営に必要な資金を更に高める活動をしているか、保育の質に関係しない費用を削減する活動をしているか(園としての実施運営の質に関連)

保育園でかかる費用の大半は人件費になります。国としても一保育園経営者としても人件費はより高める必要があると思います。一方で、収入に対する人件費の割合(人件費率)はどこまで高めるべきでしょうか。または人件費以外の費用はどれだけかけるべきなのでしょうか。

質の高い保育には質の高い保育士等が必要になります。質の高い保育士等にしっかりと給与賞与を支給するために、保育園の経営者は必要性の少ない費用を削減しなければならないと考えています。

私自身もいくつか具体的な手法を実践し、職員にほとんど負担なく年間で数十万円程度の費用を削減しました。おかげで職員が働きやすくするための施設の改修や外部研修の受講、子どものためのおもちゃ・絵本などを購入する資金源が出来ました。

また、園の制度として外部研修受講を就業規則に明記することで、「この園で働く人にはしっかりと成長してレベルアップできる環境を整えています」と明言出来るようになりました。

マネジメントの観点からはヒトのマネジメントやカネのマネジメントが関係してきます。

自園の保育目標を具体化して、どんな子ども像を持ってほしいかを言葉にする(教育の概念と実践としての内容や考え方に関連)

子どもたちの姿をどのように見るのか?は、保育士によって様々に違ってきています。しかし、園としても職員に「持ってほしい子ども像、子ども観、保育観」というものがあるはずです。子どもを管理的に見るような保育観を持っている人を求めている保育園は少ないと思いますが、「小学校に上がって困らないように」という大義名分のもとに、管理的な保育をしてしまっている保育園は少なくないと思います。

子ども時代をどのように生きるのか、その先にどんな人生を歩んでほしいのか、そのために保育園で何をすべきか、どんなふうに子どもたちに生活してもらいたいのかを「保育目標」やその保育目標を具体化した「言葉」にして職員に伝えられているか?を見直します。

マネジメントの観点からは保育目標の見直し、ヒトのマネジメント、経営者の意識改革が関係してきます。

子どもたちと保育士との関わりを客観的に見る(例えばビデオカンファレンス、他クラスの見学)と同時に、遊具・備品・おもちゃ・絵本の棚卸(保育プロセスの質に関連)

保育士としての経験年数や担当クラス、これまでの職歴などによって、保育士のレベルや出来ることは様々だと思います。ところがその様々な保育士が自分自身の保育を客観的に見る機会を取れないと、「独りよがり」の保育になってしまいます。

もちろん自分で保育の内容を考えて、実践して反省する一連の流れができているのであれば、その保育士のレベルはどんどんアップしていくことになると思います。ただ、自分ひとりでレベルアップするのはかなり難しいのが実際です。何が出来ていて何が出来ていないのかは、客観的に見ることが最も効果的だからです。

そこで、自分の保育の様子をビデオに撮ってもらってみんなで検討する、ビデオカンファレンスをしたり、他のクラスの保育士に自分の保育の様子を見てもらって、後から意見出しをしてもらうことが効果の高い手法になります。(これは見られる側の保育士からすると、非常に嫌なものなのですが、良薬口に苦しだと思ってやってみると良いと思います)

また、自園にどんなものがあるのか?を知っていると知らないとでは出来ることが大きく異なってきます。また、あることは知っているが長らく使っていないものは廃棄したり買い替えたりしなければなりません。「棚卸」とは今何がどこにいくつあるのかを目に見える形にする活動です。

マネジメントの観点からはヒトのマネジメント、モノのマネジメントが関係してきます。

子どもたちの健やかな成長とはどんなことか?出来なければならない「達成目標」ではなく、経験する過程はどのようなものだったのか、どんなことが出来るようになったかの「獲得したもの」(プラスの側面だけが記録されるもの)を把握しているか?(成果の質に関連)

最新の保育所保育指針で「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が示されました。批判されたりわかりやすいと評価されたりしているものですが、指針改定に携わった方は(本音か建前かは分かりませんが)「この10の姿は達成目標ではない」とおっしゃっています。

この姿は小学校との接続を強く意識して作られていることを前提に考えるとそれほど理解し難いものではないと思いますが、その点を見ないと「国が子どもの姿を決めてしまう暴挙だ!」となるのかもしれません。

個人的には保育園での生活でどんなことが出来るようになったのか、どんな関わりで出来るようになったのかをリストアップしてあげると良いのではないかと思います。もちろん出来ないこともたくさんあると思いますが、だからといってそのことが、子どもの存在や人格を否定するものでは一切ないと思います。

小学校以降は「出来たか」「出来なかったか」という”結果”が点数や通知表で目に見える形で表されてしまいます。小学校の狭い世界でのモノサシに子どもの姿を当てはめただけに過ぎないのに、と個人的には思っていますが、いざ目に見える形になると大人はそれに引っ張られがちになります。

だからこそ、子どもの育ちを長期間見ている保育園では”結果”だけにこだわるのではなく、「出来るようになった過程」を捉えたり、「出来ることをリストアップするだけ」にすることが大事なのではないかと思います。

マネジメントの観点からは保育目標の見直し、ヒトのマネジメント、経営者の意識改革が関係してきます。

保育の質の6つの次元とマネジメントの各領域が直接的に関係する部分はそれほど多くはないのかもしれません。ですがどの園長先生も「保育の質を高めたい」と思っているのではないでしょうか。そのための手段として、マネジメントをしっかりと理解して実践することが非常に重要と思っています。

これまで保育の世界だけで叩き上げてきた園長先生にとっては「マネジメント」は海の物とも山の物ともつかぬ、よく分からない概念かもしれません。実は殆どの園長先生たちが実践されてきたことマネジメントの具体的な実践とは、そう変わらないと思います。

自分がやってきた方法とは違うやり方、経営の仕方を知る機会が少なかったという園長先生もいらっしゃると思いますので、一度この機会に整理するのも良いのではないかと思っています。

個別の内容については、今後記事にする予定ですが、「お問い合わせ」から直接お問い合わせいただければ個別に対応もさせていただきたいと思っています。

マネジメント
おすすめの記事